宮崎簡易裁判所 昭和35年(ハ)98号 判決 1960年6月29日
原告 合田栄石
被告 丸山郁夫 外四名
主文
別紙目録記載の各不動産はいづれもこれを競売に附し、その代金より競売手続費用を控除した金額を分割し、原被告等各六分の一づゝ配当することを命ずる。
訴訟費用はこれを六分し、原被告等六名において各その一を負担するものとする。
事実
原告は
「原被告共有の別紙目録記載の不動産を分割する。訴訟費用は被告等の連帯負担とする」との判決を求め、その請求の原因として「別紙目録記載は原告と被告等の共有物であつて、その持分はいづれも各人がその六分の一を有している。原告はもと共有者の一人であつた訴外丸山静夫の持分全部を競落により取得したもので被告等はいづれも兄弟関係にあるが、原告のみが親族関係にない。
その様な事情から原告は共有山林に対して持分に応ずる使用収益には不便を感ずるので被告等に対し共有物分割請求をなしたが分割の協議がととのわないので本訴に及んだが、右共有山林は現物をもつて分割することができないので分割方法として競売による分割方法を希望する」と述べた。
被告丸山郁夫、被告兼被告丸山幹夫、同嘉夫、同晴子訴訟代理人丸山邦夫は、いづれも、
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、答弁として、
「原告がもと別紙目録記載の山林に対する共有者の一人であつた訴外丸山静夫の持分全部を競落により取得し右山林に対する共有者となつたこと、及び原被告等共有者の各持分がいづれもその六分の一であること並びに被告等が兄弟の関係にあるにひきかえ原告とは親族関係のないことは認める。
前記共有山林は公簿面積に比し実面積が広大でその分割費用も多額であるから現物分割は不適当と思料するので原告主張どおり競売に因る分割方法を希望する」と答えた。
理由
原告がもと別紙目録記載の各山林に対する共有者の一人であつた訴外丸山静夫の持分全部を競落により取得し、右山林に対する共有者となつたこと、及び原被告等共有者の各持分がいづれもその六分の一であること、(並びに被告等が兄弟姉妹の親族関係あるに引きかえ原告のみ親族関係の存しないことは当事者間に争がない。
ところで共有物分割の訴とは共有者間で分割の協議ととのわない場合において裁判所に右協議に代る分割方法を請求するもので民法第二百五十八条により認められた、いわゆる形式的形成訴訟といわれるものであるが、右民法の規定では現物分割を原則とし例外的に現物分割不能か若くは現物分割により著しく価格毀損の虞ある場合に限つて競売による分割方法を採るべきことを命じている。したがつてこの立場にたてば当事者には一応現物分割の当否を訴訟上具体化することが要求されるともいゝ得るが、ひるがえつていわゆる形式的形成訴訟といわれる訴訟の特質を考えてみるに、この訴は通常の訴訟に必然的な勝敗の観念を容れる余地がなく、分割を請求された裁判所としては分割の協議ととのわざる場合常に何らかの方法で分割を実施することを要するもので、いわば国家の国民に対する後見的役割を訴訟の形で果すよう規定しているものと解される。それでかように考えてくると前示民法の条文による原則としての現物分割、例外としての競売分割の規定はそれほど喧かましく固守する必要はなく右規定は非常に幅の広い解決が許されるものであるともいゝ得る。
いまそのような観点から本件を考えてみると、本件においては当事者双方ともに競売による分割方法の採用されんことを求めて現物分割の当否について訴訟上には何等の資料が提出されていないが、このことは当事者間で分割の協議がとゝのわず且つ現物分割不能の場合に該当するものとして取扱つて差支えないものと解するのが相当である。(もつとも当事者双方ともに競売分割を希望している以上競売に因る分割の合意があるではないかと反論されるかも知れないが、競売という国家機関による法定の売却手続を単なる私人の合意だけで利用できるかについては甚しく疑問であり、利用できなかつた場合の当事者の蒙ることあるべき不利益を考えると当裁判所としてはこの点消極的立場を採らざるを得ない)
以上のようなわけで本件については現物分割の方法にかえ、競売分割の方法を採用して競売を命ずることとするが、競売手続の費用は共益費用であるから競売代金より先ず差引きその残額を共有者の各持分(本件においては六分の一)に応じて分割すべきこととなる。
そして訴訟費用の点についても前示訴訟の特質を考えその持分に応じた負担を命ずることとして主文のとおり判決する。
(裁判官 麻上正信)
目録
宮崎郡佐土原町大字東上那珂字長谷水一万六千五百三十五番
一、山林 四歩
前同所一万六千五百三十六番
一、山林 三畝十六歩
前同所一万六千五百五十五番の三
一、山林 二畝歩